何でもない光

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これは、みずから灯りをつけて生活を続ける彼らと私の記録です。

「何でもない光」は、二つの意味を持ちます。
「なんでもない光」は、何気ない日常の光。
「なにでもない光」は、まだ何者でもない小さな存在の光。

光はやがて強く大きくなるかもしれないし、静かに消えてゆくものかもしれません。
どちらであっても、確かにそこにありました。

物語はいつか終わります。
音も光も消えて、幕は下り、役者たちは生活に帰ってゆきます。
その瞬間を、私は舞台と客席の境目で見てきました。
憧れとともに切り取った光景の向こう側に、続ける意志でしか成り立たない生活があることを知っています。

舞台が終わってもライブがパーティーが終わってもパフェ食べ終わっても、生活は続く。いや、続ける。
次の舞台まで。次の舞台があることを祈って。いや祈るな、作れ。
舞台も生活も、いつか終わりがくるものでも、帰るのはひとりきりの真っ暗な部屋だとしても、もう一度みずから灯りをつけて、生活を続けてゆく。
その生活の先に、いや中にこそ、光は宿ると信じる。

舞台の時間より生活の時間のほうが圧倒的に長い人生の中で、それでも人はいっときの光を見つめています。

 

本作は、2019年から現在まで、演出家・河井朗が主宰する舞台芸術カンパニー『ルサンチカ』と共に過ごし、計24公演に帯同した時間の一部から構成しています。

彼らはアルバイトで生計を立てながら作品のためにお金を貯め、作品をつくり、本番が終わればまた生活に戻り、次の舞台を目指します。
私もまた、そのリズムの中で暮らし、記録を続けてきました。

そんな繰り返しに思える生活すら、いつか終わりのくるものなのだと、私たちはどこかで分かっているのでしょう。

だからこそ、私はシャッターを切り、言葉を書き留めようと試みます。
感じたこと、言ったこと、見ていたもの、見られなかったもの。
写真に撮って、テキストに起こして、忘れてしまわないように。
いつか、すべて忘れてしまっても大丈夫なように。